相続税の課税割合10.4%で過去最高 「簡易な接触」2万件超、申告後対応にも注意

相続税の課税割合10.4%で過去最高 「簡易な接触」2万件超、申告後対応にも注意

はじめに

令和6年分の相続税の課税割合は10.4%となり、過去最高を更新しました。一方、令和6事務年度の相続税調査では、実地調査が9,512件に増加したほか、「簡易な接触」が2万1,969件と過去最多となりました。国税当局は実地調査だけでなく、「簡易な接触」に力を入れており、税理士にとっては申告後の対応まで含めた注意が必要です。


【相続税・贈与税の申告に関わる業務を一元化!エッサムのe-PAP相続・贈与申告システム】


1.相続税の課税割合、初の10%台

国税庁が公表した令和6年分の相続税の申告事績によると、令和6年中に死亡した被相続人は160万5,378人で、前年分比1.9%増となりました。このうち、相続税の申告書を提出した被相続人は16万6,730人で、同7.1%増となり、いずれも過去最多です。


被相続人数に占める相続税の課税対象者の割合である「課税割合」は10.4%となり、前年分から0.5ポイント上昇しました。都道府県別では東京都が20%と最も高くなっています。ちなみに、令和5年分の被相続人数は157万6,016人で、このうち相続税の課税対象となった被相続人数は15万5,740人の課税割合が9.9%でした。



課税価格の合計は23兆3,846億円で、被相続人1人当たりでは1億4,025万円となっており、令和5年が課税価格の合計が21兆6,335億円、被相続人1人当たりでは1億3,891万円でしたので、ともに増加しています。税額の合計は3兆2,446億円、被相続人1人当たりでは1,946万円となっており、こちらも前年の税額の合計3兆53億円、被相続人1人当たり1,930万円よりも増加しています。


相続財産の金額の構成比は、現金・預貯金等34.9%、土地30.2%、有価証券17.8%の順で、前年が現金・預貯金等が35.1%、土地31.5%、有価証券17.1%だったことから、「現金・預貯金等」「土地」が若干減少、「有価証券」が増えたことになります。


2.実地調査は9,512件、非違割合82.3%に

相続税の課税対象者が増える中、税理士にとっては、相続税申告そのものだけでなく、申告後に国税当局から照会を受けた場合の対応も重要になっています。


令和6事務年度における相続税の実地調査件数は9,512件で、前事務年度比11.2%増加しました。このうち申告漏れなどの非違があった件数は7,826件で、非違割合は82.3%となっています。


実地調査の申告漏れ課税価格は、前事務年度比7.2%増の2,942億円、加算税を含む追徴税額は、同12.2%増の824億円といずれも増加し、追徴税額は過去10年間で最高となっています。重加算税賦課件数は、同9.7%増の1,065件、申告漏れ課税価格は、同7.2%増の2,942億円で、このうち重加算税賦課対象となったのは、同18.4%増の444億円でした。


1件当たりの申告漏れ課税価格は3,093万円、1件当たり追徴税額は867万円です。また、無申告事案については実地調査件数が650件、非違件数が562件となりました。件数などは前事務年度を下回ったものの、追徴税額は15.3%増の142億円で過去最高となっています。


また、国税庁では、「無申告事案」と「海外資産関連事案」に対する調査にも積極的に取り組んでいます。


無申告事案の実地調査件数は、前事務年度比5.8%減の650件で、非違件数は、同8.3%減の562件、申告漏れ課税価格は、同0.5%減の749億円と減少しましたが、追徴税額は同15.3%増の142億円で過去最高となっています。


 海外資産関連事案は、納税者の資産運用の国際化に対応し、CRS情報をはじめとした租税条約等に基づく情報交換制度などを活用し、海外取引や海外資産の保有状況に努めています。その実地調査件数は43.5%増の1,359件、非違件数は同24.4%増の209件、申告漏れ課税価格は、55.5%増の97億円と、いずれも過去最高です。


【相続税・贈与税の申告に関わる業務を一元化!エッサムのe-PAP相続・贈与申告システム】


3.実地調査の2倍超に増えた「簡易な接触」

今回の調査実績で特に注目したいのが、「簡易な接触」の増加です。「簡易な接触」とは、調査官が納税者宅などに臨場して帳簿書類や財産関係資料を確認する実地調査とは異なり、文書による確認、電話による照会、税務署への来署を依頼した上での面接などによって申告内容を確認するものです。実地調査は質問検査権に基づいて行われますが、「簡易な接触」は行政指導です。昔の「お尋ね」とは性質が異なります。


令和6事務年度の「簡易な接触」の件数は2万1,969件で、前事務年度比17%増となりました。申告漏れ等の非違件数は5,796件、申告漏れ課税価格は1,123億円、追徴税額は138億円です。


いずれも、国税庁が「簡易な接触」事績を集計し始めた平成28事務年度以降で最高となっています。



4.「実地調査」「簡易な接触」の使い分け

会計事務所としては、顧問先に「簡易な接触」の連絡があった場合、昔の「お尋ね」と同じように考えず、軽く扱わないことが重要です。税務署から電話照会やハガキによる確認があった場合には、何について確認を求めているのかを整理し、当初申告書、財産評価の根拠資料、預貯金の入出金、名義財産の有無など、照会事項に関係する資料を再確認することが肝要です。行政指導であっても、これを無視したり、いい加減な対応をすると、税務調査に移行することが内部の取扱いで決まっています。


国税当局では、深度ある税務調査を実施していくため、「簡易な接触」と「実地調査」を分けて明確にしており、調査リスクが低いものを「簡易な接触」で対応し、調査して詳しく調べるものを「実地調査」としています。調査の前段階にあるのが「簡易な接触」と理解して対応したいものです。


税理士としては、相続税申告書を提出して業務終了と考えるのではなく、申告後にお尋ねや電話照会があった場合まで想定し、財産評価や財産帰属の判断根拠を説明できる資料を整えておくことが重要です。