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- 個人申告
はじめに
防衛力強化の財源を確保するため、防衛特別法人税に続き、令和9年1月から防衛特別所得税が始まります。防衛特別所得税は所得税額の1%相当額ですが、復興特別所得税の税率が2.1%から1.1%へ引き下げられるため、源泉徴収税額の計算方法や合計税率は変わりません。ただし、令和9年分の税額表への切替えや納付書、法定調書、年末調整、適用時期の判定など、企業経理においては確認すべき実務上の注意点は少なくありません。
防衛力強化のための財源を確保する税制が、法人と個人の双方で動き始めています。
1.防衛特別法人税の実務ポイント
法人については、令和7年度税制改正により「防衛特別法人税」が創設されました。原則として、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。例えば3月決算法人であれば、令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度が最初の課税事業年度となります。
防衛特別法人税の納税義務者は、各事業年度の所得に対する法人税を課される法人です。税額は、所得税額控除や外国税額控除など一定の税額控除を適用しないで計算した「基準法人税額」から、年500万円の基礎控除額を差し引き、その残額に4%を乗じて計算します。
したがって、単純に法人税額全体へ4%を上乗せする制度ではありません。基準法人税額が500万円以下であれば、原則として防衛特別法人税額はゼロになります。国税庁は、中小企業の約94%が課税対象外になるとしています。
ただし、税額がゼロだから申告も不要というわけではありません。法人税の納税義務がある法人は、欠損や基礎控除によって防衛特別法人税額がゼロとなる場合でも、防衛特別法人税の確定申告書を提出する必要があります。
申告書は法人税及び地方法人税の申告書と一体の様式ですが、「別表一」では防衛特別法人税の記載部分が別葉の「別表一次葉一」などになっています。税額が発生しない中小企業でも、この別葉の提出を忘れないよう注意が必要です。
確定申告書の提出期限は、原則として課税事業年度終了日の翌日から2か月以内です。法人税確定申告書の提出期限が延長されている場合は、防衛特別法人税についても延長後の期限が適用されます。また、中間申告は、原則として令和9年4月1日以後に開始する課税事業年度から必要になります。
個人に関しては、令和8年度税制改正により「防衛特別所得税」が創設されました。令和9年1月1日以後に生ずる所得について、所得税額の1%相当額が課されます。
2.令和9年1月から防衛特別所得税を源泉徴収
給与、賞与、退職手当、原稿料、講演料などから所得税を源泉徴収する事業者は、防衛特別所得税についても源泉徴収義務者となります。所得税を徴収する際に防衛特別所得税を併せて徴収し、所得税の法定納期限までに国へ納付しなければなりません。
一方、復興特別所得税の税率は、所得税額の2.1%から1.1%へ引き下げられます。その課税期間は、従来の「令和19年12月31日まで」から「令和29年12月31日まで」へ10年間延長されます。
改正後は、防衛特別所得税1%と復興特別所得税1.1%を合わせて2.1%となります。改正前の復興特別所得税率も2.1%であるため、所得税に上乗せされる合計税率は変わりません。このため、源泉徴収税額の基本的な計算方法にも変更は生じません。
給与以外の報酬・料金などについては、支払金額に「所得税率×102.1%」で求めた合計税率を乗じます。
3.報酬・料金は合計税率で一括計算
たとえば、所得税率10%が適用される原稿料や講演料の合計税率は10.21%です。22万2222円の講演料を支払う場合は、「22万2222円×10.21%=2万2688.8662円」となり、1円未満を切り捨てた2万2688円を源泉徴収します。
所得税、防衛特別所得税、復興特別所得税を別々に計算し、それぞれについて端数処理をするのではありません。3税を含む合計税率で計算した税額について、最後に1円未満を切り捨てます。
また、税引手取額を契約で定めた報酬では、グロスアップ計算が必要です。手取額が10万円で、合計税率が10.21%の場合、支払総額は「10万円÷89.79%」で計算し、11万1370円となります。この金額に10.21%を乗じた1万1370円が納付税額です。
給与や賞与については、支払年に対応する源泉徴収税額表を使用します。令和9年分以後の税額表には、所得税、防衛特別所得税、復興特別所得税の合計額があらかじめ反映されます。
4.給与は令和9年分の税額表へ切替え
給与計算担当者が防衛特別所得税の1%を別途計算する必要はありません。ただし、令和9年に支給する給与について、誤って令和8年分の税額表を使わないよう注意が必要です。とりわけ、令和8年12月勤務分を令和9年1月に支給する会社では、対象となる年分を正しく判定し、給与計算システムを令和9年分へ切り替える必要があります。
改正は「令和9年1月1日以後に生ずる所得」に適用されます。支給日が給与規程や契約、慣習などで定められている給与は、その支給日で判定します。令和8年12月分の給与であっても、所定の支給日が令和9年1月であれば、原則として防衛特別所得税の対象です。
一方、利益を基礎として金額を定める役員賞与は、株主総会などで具体的な支給額が決議された日が基準となる場合があります。実際の振込日だけで適用関係を判断することはできません。
源泉徴収した所得税、防衛特別所得税、復興特別所得税は、合計額を1枚の所得税徴収高計算書で納付します。税目ごとに納付書を分ける必要はありません。
5.納付書は従来の様式をそのまま使用
手元にある納付書に「源泉所得税及び復興特別所得税」と印字されていても、令和9年1月以後の納付にそのまま使用できます。「防衛特別所得税」の文言を追記したり、「納期等の区分」を訂正したりする必要もありません。
令和8年分の年末調整で生じた超過税額を、令和9年1月以後の給与から徴収した3税の合計額から控除する場合も、従来どおり「年末調整による超過税額」欄に控除額を記載します。防衛特別所得税を含む部分と含まない部分に分解する必要はありません。
年末調整では、算出所得税額から住宅借入金等特別控除額を控除した「年調所得税額」に102.1%を乗じ、100円未満を切り捨てて年調年税額を求めます。この計算方法も令和8年分と令和9年分で変わりません。
給与所得の源泉徴収票や利子等の支払調書などの「源泉徴収税額」欄には、所得税、防衛特別所得税、復興特別所得税の合計額を記載します。3税を分けて表示する必要はありません。
防衛特別所得税は、合計税率が変わらないため、一見すると実務への影響が小さい改正に見えます。しかし、適用時期の判定や税額表の切替え、給与計算システム、帳票表示の変更など、事前に確認すべき項目は少なくありません。防衛特別法人税の新しい申告書への対応と併せ、企業の経理や顧問税理士等は早めに準備を進める必要があります。
【参考】
国税庁『防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし(令和9年1月以後の源泉徴収)』
国税庁『防衛特別所得税及び復興特別所得税~源泉徴収関係~Q&A』