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はじめに
国税庁は令和8年(2026年)5月29日、「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」を公表しました。基礎控除や給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の改正について、令和8年12月の年末調整を中心に実務上の取扱いを整理しています。11月までの給与計算には変更がない一方、12月の年末調整では改正後の控除額や新しい計算表を使用する必要があります。
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令和8年度税制改正では、前年に続いて所得税の基礎控除や給与所得控除が見直されました。
1.令和8年11月までの給与計算は変更なし
今回公表されたQ&Aは、主に令和8年12月に行う年末調整や、それ以後の源泉徴収事務について、給与の支払者が注意すべき事項をまとめたものです。12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税に適用されるのは、基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げと年末調整用の計算表の改正、扶養親族等の所得要件の改正です。
これに対し、源泉徴収税額表の改正と、公的年金等の源泉徴収税額を計算する際の基礎的控除額の引上げは、令和9年1月1日以後に支払う給与や公的年金等から適用されます。
給与の源泉徴収事務については、令和8年11月まで変更はありません。毎月の給与や賞与から差し引く所得税は、従来の源泉徴収税額表を使って計算します。
改正内容が反映されるのは、原則として令和8年12月に行う年末調整です。給与の支払者は、引上げ後の基礎控除額と、国税庁が作成する改正後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に基づき、令和8年分の年税額を計算します。そのうえで、改正前の源泉徴収税額表によって1月から11月までに徴収した税額などと精算します。この結果、すでに徴収した税額が年調年税額を上回れば、その差額を従業員へ還付することになります。
一方、令和9年1月1日以後に支払う給与については、改正後の「令和9年分源泉徴収税額表」を使用します。同税額表は、令和8年8月末ごろに国税庁ホームページへ掲載される予定です。
給与所得控除の最低保障額は、所得税法上、65万円から69万円へ引き上げられました。さらに、令和8年分と令和9年分については、給与収入220万円以下の人を対象として、給与所得控除を原則74万円とする特例が設けられています。
2.給与所得控除は74万円となる特例に注意
このため、令和8年分の給与収入が69万1千円以上220万円未満の場合、給与所得の金額は通常の計算表だけではなく、特例を反映した金額で計算する必要があります。
例えば、給与収入が74万1千円以上219万1千円未満の場合、
給与所得は、「給与収入-74万円」
となります。
給与収入が69万1千円以上74万1千円未満であれば、給与所得の金額はゼロです。
国税庁が作成する令和8年分の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」には、この特例も反映される予定です。同表は令和8年8月末ごろに公表予定の「令和8年分年末調整のしかた」に掲載されます。年末調整では、必ず改正後の表を使用する必要があります。
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給与所得控除の引上げに伴い、配偶者や扶養親族などが給与収入を得ている場合、その合計所得金額も変わります。これまで所得要件を超えていた親族が、新たに扶養控除や配偶者控除などの対象となるケースが考えられます。
3.扶養親族等の追加は申告書の再確認
令和8年分の扶養控除等申告書について、記載事項そのものに変更はありません。ただし、改正によって新たに扶養控除等の対象となる親族がいる従業員は、その親族を記載した扶養控除等申告書を勤務先へ提出する必要があります。
その際は、申告書の「異動月日及び事由」欄に「令和8年12月1日 改正」などと記載します。勤務先では、すでに提出されている申告書を従業員に返却するなどして、扶養親族や配偶者の所得見積額に変更がないか確認することが重要です。
なお、令和8年11月30日以前に支払う給与の源泉徴収税額を計算する際には、今回の改正によって新たに対象となった扶養親族等を「扶養親族等の数」に含めません。12月の年末調整との取扱いの違いに注意が必要です。
改正の施行日は令和8年12月1日ですが、年末調整関係書類を12月から集め始めたのでは、年末調整に間に合わないことも想定されます。
4.年末調整書類は12月前の提出も可能
Q&Aでは、改正内容を反映した基礎控除申告書や配偶者控除等申告書などについて、12月1日より前に従業員から提出を受けても差し支えないと説明しています。
企業や会計事務所は、国税庁が今後公表する年末調整関係資料や給与計算ソフトの更新時期を確認したうえで、従業員への案内や申告書の回収を早めに準備する必要があります。また、令和8年度税制改正でひとり親控除の控除額は35万円から38万円へ引き上げられましたが、この改正は令和9年分以後の所得税に適用されます。令和8年分の年末調整には反映しないため、適用年を混同しないことも重要です。
令和8年度税制改正による給与所得の源泉徴収票の記載項目の変更はありません。ただし、国税システムの更改に伴い、令和8年8月以降、源泉徴収票を含む法定調書の様式が変更されます。さらに、令和9年1月以後に提出する令和8年分の源泉徴収票については、市区町村へ給与支払報告書を提出すれば、原則として税務署への提出が不要となる「みなし提出の特例」が始まります。ただし、従業員本人への源泉徴収票の交付は引き続き必要です。
5.源泉徴収票は様式変更と提出方法にも注意
令和8年末の実務では、基礎控除や給与所得控除の改正だけでなく、年末調整用の計算表、扶養関係の申告書、源泉徴収票の様式や提出方法まで、複数の変更が重なります。企業の給与担当者や会計事務所は、8月末ごろに公表される最新資料を確認し、年末調整前に対応手順を整理しておくことが求められます。