防衛特別法人税が4月1日から始動 法人申告実務と資産評価実務に影響

防衛特別法人税が4月1日から始動 法人申告実務と資産評価実務に影響

はじめに

令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度から、防衛特別法人税が始まります。
基礎控除として年500万円が設けられるものの、税額がゼロでも申告書の提出が必要です。
さらに、この創設に伴い国税庁は非上場株式の評価に用いる財産評価基本通達も改正し、純資産価額方式で使う法人税率等の合計割合を37%から38%へ引き上げられました。
法人実務と資産税実務の両面に影響する改正として整理しておく必要があります。

1.新設された防衛特別法人税

令和7年度税制改正により、防衛財源確保法が改正され、新たに「防衛特別法人税」が創設されました。これにより、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、法人税とは別途、防衛特別法人税がかかります。


防衛特別法人税の特徴は「税額が発生する法人だけの制度」ではないという点です。基本的に納税義務者となるのは、各事業年度の所得に対する法人税を課される法人です。そして、所得金額が欠損であるなどの理由により基準法人税額がゼロとなる場合や、基礎控除額の控除によって課税標準法人税額がゼロになる場合であっても、原則として確定申告書の提出が必要となります。つまり、「税額が出ないから申告不要」とはならないため、法人側は早い段階から対応を確認しておく必要があります。


防衛特別法人税の税額は、各課税事業年度の「課税標準法人税額」に4%の税率を乗じて計算します。この課税標準法人税額は、「基準法人税額」から「基礎控除額」を差し引いた金額です。基準法人税額とは、一定の税額控除制度などを適用しないで計算した各事業年度の所得に対する法人税額をいいます。中小法人などに一定の配慮を行う観点から、基礎控除額が年500万円設けられています。


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(出典:国税庁パンフレット「防衛特別法人税が創設されました」


2.基礎控除と申告実務の注意点

年500万円の基礎控除があるからといって、すべての法人に実質的な影響が小さいとは言い切れません。課税事業年度が1年に満たない場合には、基礎控除額は年500万円ではなく、500万円を12で除した金額にその課税事業年度の月数を乗じて計算します。したがって、短期事業年度では控除額も月数按分されることになります。組織再編や決算期変更などで事業年度が短縮されるケースでは、基礎控除額の計算を誤らないよう注意が必要です。


また、基準法人税額の計算では、一定の制度を適用しないこととされています。具体的には、所得税額控除、外国税額控除、分配時調整外国税相当額の控除、仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除などが対象です。このほか、戦略分野国内生産促進税制に関する一定の税額控除なども含まれます。実務では、通常の法人税額をそのまま基準法人税額と考えてしまうと誤りやすいため、別途、制度上の定義を確認したうえで計算する必要があります。


申告書の提出期限は原則、各課税事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内です。申告書は法人税及び地方法人税の申告書と一体の様式になっていますが、防衛特別法人税の記載欄は別葉となっているため、記載漏れには注意が必要です。特に初年度は、税額が発生しない法人でも提出が必要である点を見落とす可能性があるため、申告チェックリストへの組み込みが欠かせません。なお、中間申告書の提出は令和9年4月1日以後に開始する課税事業年度から適用されます。

3.非上場株評価への波及と実務対応

防衛特別法人税の創設は、法人税申告実務にとどまらず資産税実務にも波及しています。国税庁は令和8年3月30日、財産評価基本通達の一部改正について公表しました。これは、防衛特別法人税が創設されたことに伴い、非上場株式の純資産価額方式において用いる「法人税率等の合計割合」を見直すものです。従来37%としていた割合を38%へ引き上げ、令和8年4月1日以後に相続、遺贈または贈与により取得した取引相場のない株式等の評価に適用するとしています。


純資産価額方式では「相続税評価額による純資産価額」から「帳簿価額による純資産価額」を差し引いた評価差額に対し、法人税額等に相当する金額を控除します。この控除額を求める際に使うのが「法人税率等の合計割合」です。防衛特別法人税が導入されることで、この割合の前提となる税率構造が変わるため、国税庁は評価通達の見直しを行いました。改正後は「法人税(地方法人税及び防衛特別法人税を含む)、事業税(特別法人事業税を含む)、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合」として整理されます。


ここで実務上興味深いのは、防衛特別法人税には年500万円の基礎控除があるにもかかわらず、評価通達上の法人税率等の合計割合の算定に当たっては、この基礎控除額に相当する金額を加味しないとされた点です。国税庁はその理由について、評価方法の簡便性を考慮したためと説明しています。つまり、株価評価の場面では、防衛特別法人税の実際の個別計算を細かく反映するのではなく、評価の簡便性と統一性を優先した取扱いが採られたことになります。


このため、令和8年4月以後の非上場株式評価では、法人実態として防衛特別法人税の基礎控除の影響を受けるかどうかにかかわらず、通達上は一律に改正後の38%を前提として評価が行われることになります。相続税や贈与税の申告を行う税理士にとっては、評価明細書の記載や株価試算の前提が変わることを意味します。国税庁は『関連する「第5表 1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」や「第8表 株式等保有特定会社の株式の価額の計算明細(続)」についても別途改正を予定している』としています。


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(出典:国税庁ホームページ


4.法人申告実務と資産評価実務に影響

今回の改正を通して見えてくるのは、防衛特別法人税が単なる新税の追加ではなく、法人申告実務と資産評価実務の双方に影響する制度ということです。法人側では税額ゼロでも申告が必要になる点が初年度の重要なポイントです。一方、資産税の現場では非上場株式評価に用いる通達上の税率前提が変わるため、相続・事業承継の場面でも注意が必要です。


令和8年度は、防衛特別法人税そのものの計算だけでなく、関連通達や様式改正まで含めて、横断的に確認することが求められます。