はじめに
国税庁は2025年9月1日、令和7年分の「給与所得の源泉徴収票」の様式を改正しました。令和7年度税制改正で新設された「特定親族特別控除」に対応する新様式を公表し、併せて「令和7年分法定調書の作成手引」も公開しています。
この改正は単なる帳票の変更ではなく、若年層支援と税務デジタル化の両面で実務に大きな影響があります。給与計算や年末調整には早期のシステム改修と運用準備が必要です。
源泉徴収票改正の背景には、令和7年度税制改正で創設された「特定親族特別控除」があります。
1.改正の背景に「特定親族特別控除」
この制度は、扶養を外れた19歳以上23歳未満の若年層を対象に、所得に応じて段階的な税負担軽減を図るもの。少子化対策と若年世代の自立支援を目的として、親元を離れて学業や就労を行う学生・新社会人の経済的負担を和らげます。
【「特定親族」の要件】
対象となる親族(配偶者を除く)は、以下のすべてを満たす必要があります。
・納税者と"生計を一"にしている
・その年12月31日時点で19歳以上23歳未満
・合計所得金額が58万円超123万円以下
・青色・白色事業専従者に該当しない
注目すべきは、扶養控除の対象外となる所得層(58万円超~123万円以下)を支援する点です。控除額は所得に応じて最大63万円から最小3万円まで段階的に設定され、所得が多いほど控除額が減る「逓減型」となります。
令和7年分の源泉徴収票は構成が見直されました。以下が主な変更点です。
2.源泉徴収票の新様式と主な変更点
(出典:国税庁のサイトを参考に筆者が作成)
区分
令和6年分まで
令和7年分から
主な留意点
扶養人数
控除対象扶養親族の数
控除対象扶養親族等の数
「等」に特定親族を含む
特定親族
記載欄なし
「特親の数」欄を新設
人数を明示的に記載
控除額
記載欄なし
「特定親族特別控除額」欄を新設
所得に応じた控除額を記載
特に「特親の数」欄および「特定親族特別控除額」欄の新設は、企業の年末調整処理に直接影響を与えます。また、「控除対象扶養親族の数」が「控除対象扶養親族等の数」に改められた点も、法定調書間の整合性を保つ上で重要です。
これらの変更に対応するため、給与システムや印字レイアウト、マイナンバー連携項目の見直しが必須となります。
国税庁Webサイトでは「給与所得の源泉徴収票」に関する情報が公開されています。
国税庁:給与所得の源泉徴収票(同合計表)
【新様式の適用時期】
新様式は令和7年12月1日以降に支払が確定する給与から適用されます。ただし、給与システムなどの準備が整っている企業については、同年早期からの利用も容認される見込みです。
実務担当者はシステム仕様を確定し、年末調整ピーク期を迎える前に検証・運用テストを完了させることが望ましいでしょう。
【従業員提出書類の変更】
令和7年分から、従業員が提出する申告書も変更されます。新たに登場するのが、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という複合様式です。同様式には「特定親族特別控除」の専用欄が追加され、対象親族の「氏名」「生年月日」「所得見積額」などの記載が求められます。
【特定親族の所得判定に注意】
今回の見直しで最も注意すべきは「特定親族の所得判定」です。対象範囲である「58万円超123万円以下」は非常に狭く、数千円の差で控除の有無や額が変動します。例えば、アルバイト収入が想定より多くなった場合など、年末時点で条件を外れるケースもあります。
企業が誤って控除を適用すると税務署からの指摘対象となるため、給与支払者は従業員から提出される所得見積額の信頼性を慎重に確認し、疑義がある場合は確認書類の提出を求めるなどの対応が必要です。
源泉徴収票の改正は、e-Tax用XMLデータや法定調書合計表など、関連帳票にも影響します。給与計算システムや会計ソフトが対応していない場合、手入力による再作成や再提出リスクが生じるため、早期の連携及びデータ検証が欠かせません。
3.電子申告データと会計ソフトへの影響
今回の改正は、単なる制度対応にとどまらず、年末調整の電子化拡大に向けた布石でもあります。国税庁は令和7年分から電子提出義務化の範囲拡大を進めており、源泉徴収票様式の標準化はその前提となります。今後は、マイナンバー連携による自動判定支援や所得データの突合精度向上など、税務行政のデジタル化が加速する見通しです。
令和7年分の源泉徴収票改正と特定親族特別控除の導入は、税制・システム・労務の交差点にある大改正です。システム改修、申告書確認、従業員への周知という「三位一体の対応」を早期に整えることが重要になってきます。


