国税庁 令和8年分源泉徴収税額を公表も「基礎控除」特例には触れず

国税庁 令和8年分源泉徴収税額を公表も「基礎控除」特例には触れず

はじめに

国税庁は令和7年8月29日、令和8年分(2026年分)の給与等に適用される「源泉徴収税額表」を公表した。税額表は基礎控除額の引上げ(48万円から58万円)を反映しているが、令和7年度税制改正で新設された「基礎控除の特例」については織り込まれていない。年末調整と確定申告時にのみ適用されるため、実務担当者は十分に注意していく必要がある。


1.反映されていない「基礎控除の特例」

国税庁から令和8年分の給与等に適用される「源泉徴収税額表」が公表された。新税額表は、所得税および復興特別所得税を給与支払時に源泉徴収する際に使用するもので、令和8年1月以降に支払われる給与から適用される。


今回の税額表では、令和7年度税制改正により基礎控除額が従来の48万円から58万円へ引き上げられたことを前提に、「月額表」「日額表」「賞与」に対する税額表・退職所得控除額の表などが更新された。扶養親族の数え方についても見直しが行われており、給与計算の基礎資料として大きく改定された形となる。


一方で注意を要するのが、同改正で新設された「基礎控除の特例」(租税特別措置法41の16の2)が、今回の税額表には織り込まれていない点だ。


基礎控除の特例とは、基礎控除額への加算が認められる制度であり、納税者の合計所得金額に応じて37万円、30万円、10万円または5万円を上乗せできる。高額所得者にのみ制限が設けられていた従来制度に比べ、幅広い層で適用の可能性がある。しかし、同特例は年末調整または確定申告時にのみ適用される仕組みであり、毎月の源泉徴収額には反映されない。つまり、給与担当者が税額表のみを参照して月次の源泉徴収を行うと、年末調整時に税額が調整される形となる。この点を誤解して「毎月の源泉徴収に適用すべきでは」と考えると、誤計算につながるため注意が必要だ。


2.年末調整に向けた申告書の変更

令和7年度税制改正に伴い、扶養控除等申告書の様式も変更される予定だ。新様式では、従業員自身の所得見積額を記載し、それに基づき基礎控除の特例を適用するかどうかを判断する欄が設けられる。企業側はこの申告書をもとに年末調整を行うことになる。給与担当者にとっては、従業員からの申告内容を正確に収集・確認することが重要。誤った情報や未提出のまま処理を進めれば、年末調整時に大きな修正が必要となり、事務負担増や従業員とのトラブルに発展しかねない。


こうした税制改正の時期だけに、給与計算システム等を最新バージョンに更新しておくことはミス削減に繋がる。とりわけクラウド型給与計算ソフトを利用する企業は、早期にベンダーとの連携を図り、アップデートのタイミングや仕様を確認しておくことだ。


システム上は、以下の二段階処理が求められる。
(1)新税額表に基づく毎月の源泉徴収額の計算
(2)年末調整時に基礎控除の特例を反映した再計算


実務負担は増すものの、システムを適切に更新することで、担当者の手計算やミスを防ぐことが可能だ。


特定親族特別控除への対応
加えて、令和7年度税制改正では「特定親族特別控除」が創設された。同控除は、居住者と"生計を一"にする19歳以上23歳未満の親族で合計所得金額が「58万円超123万円以下」の者に対して、最大63万円の控除を認めるもの。従来の扶養控除では所得が58万円を超えると対象外だったが、同制度により「ちょっと稼ぎすぎた学生」も控除対象になる。このうち、合計所得金額が100万円以下の者については、毎月の源泉徴収計算に反映可能だが、100万円超123万円以下の者は年末調整でのみ適用される。つまり、給与計算の段階で全員を一律に扱うことはできず、所得水準による仕分けが必要となる。給与担当者は、従業員からの扶養親族に関する申告を丁寧に確認し、適用区分を誤らないよう留意する必要がある。


3.源泉徴収と年末調整の役割の違い

実務担当者が特に意識すべきは、源泉徴収と年末調整の役割の違いだ。源泉徴収は、給与支払時点での暫定的な所得税を徴収するもので、あくまで概算にすぎない。最終的な税額の確定は、年末調整や確定申告で行われる。基礎控除の特例や特定親族特別控除など、改正で追加された制度の多くは年末調整時に反映されるため、毎月の給与計算に過度な正確性を求めても対応できないケースがある。


この点を踏まえ、企業の担当者は「税額表は毎月の目安」「最終精算は年末調整」という二段階構造を従業員に説明し、誤解を避けることが重要だ。


国税庁は、今回の税額表とあわせ、年末調整のしかたやFAQを公表している。実務担当者は、公式サイトの「令和8年分源泉徴収税額表」「令和7年分の年末調整のしかた」を参照しながら、改正内容の確認と社内周知を進めることが求められる。