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はじめに
税務行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)を本格的に推進するべく、国税庁ではいよいよ、政府共通の業務実施環境GSS(ガバメントソリューションサービス)を導入する。令和7年9月より一部国税局・管轄税務署で先行導入し、令和8年3月から6月にかけて全国税局で導入する。令和8年9月からは国税総合管理システム(KSK)もKSK2に切り替えられ、税務調査も大きな転換期を迎えることになる。
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、これまでも調査部特別国税調査官が所掌する一部法人に対してオンライン調査を先行導入していたが、今回のGSS導入により、税務署が所管する法人や個人にも対象が拡大される。資産税(相続税・贈与税)も含まれることで、国税に関するすべての納税者がオンライン調査の対象となる。具体的な内容は以下の通りだ。
1.すべての納税者がオンライン調査の対象に
■Eメールによる連絡
調査官との連絡手段としてメールを活用。事前通知後の資料提出依頼などがメールで行われる。
なお、調査の事前通知自体は従来通り電話等の口頭で実施される。
■Web会議システムによる面談
調査に関するヒアリングや質疑応答をオンラインで実施。
■オンラインストレージサービスによる資料提出
国税庁が指定するオンラインストレージサービスを通じて、帳簿書類等のデータを安全に送受信。
e-Taxでは対応困難だった大容量ファイルの提出も可能となる。
これらのツールの活用により、納税者と調査官双方の業務効率化が期待されている。
オンライン調査は納税者の利便性向上と税務行政の効率化を目的とするが、強制ではなく、納税者の同意が前提となる。実施にあたっては、同意書の提出やメールアドレスの登録などの手続きが必要となる。また、メール連絡はオンラインで行うが、面談は対面で実施するなど、納税者の状況に応じてオンラインと対面を組み合わせた柔軟な運用も可能とされている。
2.調査実施には納税者の同意が必要
これまでオンライン調査が行われてこなかったのは、KSKをはじめメールのやり取りなどが外部システムと繋がることで、万が一にも情報漏洩してしまう懸念があったため。政府では、こうしたリスクもGSS導入で払拭できるとしており、将来的には全ての省庁等で導入していくことを進めている。
GSS端末が職員1人につき1台配備されることに伴い、国税当局の調査手法として大きく変わるのが実地調査のやり方。要は、出向いて行う実地調査が、オンラインで行うケースも出てくるわけだ。国税庁では、令和7年9月から全国税局に先駆け、金沢国税局、福岡国税局で実施する。その他の国税局では、令和8年3月からの導入を予定している。
GSS(ガバメントソリューションサービス)とは、デジタル庁が提供する政府共通の業務実施環境であり、行政機関の職員が安全かつ効率的に業務を遂行するためのITインフラを包括的に整備するもの。
3.GSSとは何か──政府共通の業務基盤
以下の3層構造で構成されている
・GSS業務環境(PC・グループウェア等)
・GSSネットワーク(論理ネットワーク)
・物理ネットワーク基盤(光ファイバ等)
この環境では、政府職員が使用するPC、OS、業務アプリケーション、セキュリティ対策(ゼロトラスト型)などが統一され、クラウド環境(AWS、Azure、GCPなど)とも閉域網で接続される。従来の「政府共通ネットワーク(霞が関WAN)」は廃止され、GSS G-Netと呼ばれる新たな府省庁間ネットワークが構築されている。
GSSはすでに以下の省庁で導入・運用が開始されている。
・人事院
・農林水産省
・個人情報保護委員会
・こども家庭庁
・消費者庁
・宮内庁
・内閣府
・カジノ管理委員会
今後も順次、他の府省庁への導入が進められる予定であり、国税庁もこの流れに沿ってGSS環境を活用する。
令和8年9月から国税庁の基幹システム「国税総合管理システム(KSK)」が「KSK2」へと刷新される。KSKは納税者の申告書や申請書などの情報を蓄積するシステムで、従来は税目別に管理されていたが、KSK2では以下のような改革が行われる。
4.KSK2への刷新──税務情報の統合とAI活用
■税目別データベースの統合
法人税・所得税・消費税などの縦割り管理を解消し、横断的な情報連携を可能にする。
■AI-OCRによる書面の自動読み取り
手書き文字も含めた高精度な読み取りにより、紙ベースの申告書類を効率的にデジタル化。
■オープンシステムへの移行
メインフレームから汎用OSへの移行により、外部アクセスやクラウド連携が可能となる。
これにより、GSS環境で動くパソコンを調査官が持っていれば、出先からKSK2にアクセスして資料照会を行うことが可能となり、税務調査の迅速化と精度向上が期待される。また、e-Taxで受領可能な通知の範囲も拡大され、納税者が同意すれば原則すべての通知を電子で受け取れるようになる。
なお、国税庁では「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」という資料を公表し、バージョンアップを続けている。
・税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2.0(令和3年6月11日)
・税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2023(令和5年6月23日)
上記の令和5年6月23日の資料の38ページに、現行のKSKと、来年から利用される予定のKSK2の比較図が公表されている。

[出典:国税庁 税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2023]
今回のGSS導入をはじめ、KSK2への刷新は、税務行政のDX(デジタルトランスフォーメーション)を象徴する動きであり、税務調査を見据えると、税理士や企業ともに迅速な対応が求められる。国税庁は今後もデジタル化を推進する方針であり、関係者は制度の理解と体制整備を進めることが重要となる。
